非自明なルールのカード
ドミニオンプレイヤーの kite_kuma です. この記事はドミニオン Advent Calendar 2025 の 18 日目の記事です.
ドミニオンの基本的なルール自体はボードゲームの中ではシンプルな方ではあるとは思うが,多くのカードが生まれる中でルールブックに明記されない裁定も増えてきた. そういったルールは実際に Dominion Online などで自分がプレイしてみたり,他者のプレイングを見たりして身に付くものだと思うが,複雑な話になってくると実戦でお目にかかる機会が少ないので,どうしても座学も必要だと思う.
本記事ではカードテキストやルールブックを読んだだけでは正確な挙動が理解できないであろうカードをいくつか紹介する. 基本的なルール (例えば,玉座の間で使用されるアクションにはアクション権を消費しない,など) はある程度省略して,ここでは上級者でも忘れたり間違えたりしやすいものを取り上げていく.
玉座系
玉座の間は基本にある割には難しいと初級者からよく言われるカードである.かくいう私も持続カードとの組み合わせについては自信がないこともある.
再使用について
玉座系カードで一度使用したアクションカードを再使用するとき,それが場から離れていても場には戻さずにカードの効果を処理する. 基本的にドミニオンでカードを使用するときはどこからでも場に移動してくるので例外的なルールではある.
持続を使用したときにいつまで場に残るか?
例
- 玉座の間で玉座の間を使用し,それで持続カードを使用する.このとき,クリンナップフェイズ後には持続カードを直接使用した玉座の間のみが残る.
- 参考: 持続する玉座の間の枚数
- 艀のような,次のターンに効果をもたらすかどうかを選択できる持続カードを玉座の間で使用したとき,次のターンに効果をもたらすことを一度以上選択すれば玉座の間が場に残る.
玉座の亜種である宮廷や行進なども大体同じであるし,再使用する御料車や大名にも適用される.
例
- 艀を使用して +3 ドローと +1 購入を得た後,御料車を呼び出してこのターンに +3 ドローと +1 購入を得る.もう 1 枚の御料車を呼び出して次のターンに +3 ドローと +1 購入を得ることを選択する.このとき,クリンナップフェイズには艀と 2 枚の御料車の全てが残る.
玉座系を持続カードに掛けた上でその玉座系カードを次のターンもプレイしたいのであれば,使用した持続カードが 1 度も持続条件を満たさないようにするしかないようである.
また玉座系で持続カードでもある首謀者と旗艦についてはさらに間違えやすいので注意が必要である.
例
- ターン 10 で首謀者を使用し,ターン 11 で首謀者の持続効果で首謀者を 3 回使用し,ターン 12 で首謀者の持続効果のうち 1 回を用いて首謀者を 3 回使用したとする.このときターン 10 の首謀者はターン 12 の首謀者を直接使用していないので,ターン 12 のクリンナップフェイズで捨て札になりそうだが,実際には持続カードであるターン 11 の首謀者を直接使用しているため,ターン 11 の首謀者が場から離れるまで場に残り続ける.
持続を使用したときに玉座の間が場から離れた場合の処理
さらに今年 (2025 年) のエラッタの持続に関する変更も加わると話がさらにややこしくなる.玉座の間に関連することでは,
(玉座の間などの)【「カードを再使用する効果」を持つカード】により持続カードが再使用されたが、【「カードを再使用する効果」を持つカード】がターン終了時に場にない →【「カードを再使用する効果」を持つカード】により再使用された分の使用時効果はターン終了時にすべて失われる
という部分が影響する.
例
- 船長の効果で玉座の間を使用し,その効果で手札の船着場を二度使用したとき,次のターンの開始時には玉座の間が場にないので,船着場の持続効果は一度しか発動しない.
今のルールでは,大君主やならず者などの emulator による使用では場にそのカードがないことになっているので,このような挙動となる.なお使用したターンの効果については通常通り処理される.
- (例 a) ターン 11 に玉座の間 A で玉座の間 B を二度使用する.一度目の玉座 B の使用で艀を二度使用する.一度目の艀の使用でこのターンに,二度目の艀の使用で次のターンに +3 ドローと +1 購入を得ることを選択する.二度目の玉座の間 B の使用で馬の習性を選択し,玉座の間 B が場から移動する.
- このとき,艀は持続効果があるので,ターン 11 のクリンナップフェイズに場に残る.玉座の間 A は艀を直接使用しているわけではないので,捨て札にされる.
- ターン 12 の開始時,艀は前のターンでの再使用時に「次のターンに +3 ドローと +1 購入」を選んでいるが,艀を再使用させている玉座の間 B が場から離れているため,3 ドロー 1 購入をしない.

- (例 b) ターン 11 に玉座の間 A で玉座の間 B を二度使用する.一度目の玉座 B の使用で艀を二度使用する.一度目の艀の使用で次のターンに,二度目の艀の使用でこのターンに +3 ドローと +1 購入を得ることを選択する.二度目の玉座の間 B の使用で馬の習性を選択し,玉座の間 B が場から移動する.
- このとき,艀は持続効果があるので,ターン 11 のクリンナップフェイズに場に残る.玉座の間 A は艀を直接使用しているわけではないので,捨て札にされる.
- ターン 12 の開始時,艀は前のターンでの一度目の使用時に「次のターンに +3 ドローと +1 購入」を選んでいるため,玉座の間 B が場から離れていても,3 ドロー 1 購入を行う.

艀などの持続条件があるカードの場合はややこしく,持続条件を満たす使用が何回目であるかによって異なる. 重要なのが,玉座の間が場から離れて消えるのは再使用によって次のターン以降に発揮される効果のみなので,一度目の使用については問題なく持続効果が発揮される.これは船長などで使用した場合も同じである.
この記事を書くまで,玉座の間による二度のアクションの使用は同様に処理するものであると思い込んでいたが,上に書いたように,実際にはそうではないようである.どちらかというと,玉座の間の処理は
手札のアクションカード 1 枚を使用して再使用してもよい.
というテキストと等価であると捉えた方が良さそうだ.
また,例 a でのターン 11 のクリンナップフェイズにおいて,次のターンに持続効果の処理が行われないことが確定しているにもかからわず,艀が捨て札にならないことにも注意が必要である.このためターン 12 では持続処理を行わない艀が場になぜか置いてある状態から始まることになる.エラッタするならこれも解消してほしかった…
支配
ルール的に絶対やばいのだが,私が Ban しておりあまり良く知らないため省略する.支配者が被支配者の獲得物を代わりに獲得することによる挙動が難しいイメージはある.
隠遁者
一つ一つの効果が難しいわけではないのだが,うろ覚えだと間違えるポイントが多い.まず 3 コスト以下のカードの獲得は強制である.廃棄対象は捨て札からも選べる.そして狂人との交換は購入フェイズの終了時に行われ,条件はその購入フェイズにカードを獲得していないことである.
発進の効果などで 1 ターンに複数回購入フェイズが行われることがあるが,その場合でも一度でも獲得物のない購入フェイズがあれば,その終了直後に狂人と交換する.よって発進を用いてアクションフェイズに戻り,それにより交換された狂人をすぐに使用することもできる.ただし Dominion Online ではバグにより発進のドローがフェイズ戻りよりも先に行われるので注意が必要である.詳しくはフェイズ戻り周辺に関するバグを参照.
はみだし者・大君主・船長
知らない間に持続も命令も使えなくなってとても弱体化していた.「場に出さずに使用する」が少し特殊だが,2019年のルール変更とエラッタ (ドミニオン Wiki) を参照.
守護者・ゴーストタウン・夜警・悪人のアジト
これらのカードの獲得先は捨て札ではなく手札になっている. 捨て札以外の場所に獲得する効果で獲得される場合,そちらが優先となる.例えば武器庫ではデッキトップに獲得される.
なお似ているようでもヴィラは異なり,あちらは獲得時効果で手札に移動するため,例えば武器庫でヴィラを獲得するとデッキトップから手札に移動する.
港の村
港の村が 1 金を生むかどうかの判定は地味に難しい.まず,港の村の直後に使用したアクションカード A について,+1 金トークンや豊作,来寇などの「アクションカード A の効果」でないものは判定に考慮しない.
またアクションカード A をカメレオン以外の習性として使用した場合,その効果は「アクションカード A の効果」ではないため港の村は 1 金を生み出さない.それに対してカメレオンの習性,無謀な,および長老によって変化した効果については,「アクションカード A の効果」とみなされるため,変更された処理の実行結果で +1 金を生んでいるかどうかで判断される.これらがどう違うかということについては,「効果の上書き」と「効果の書き換え」に関する2023年版裁定が参考になる.ここでの用語を使えば,「上書処理」された効果で港の村が +1 金を生むことは無いが,「書換処理」された効果で +1 金を生むことはある,ということになる.
なお,現在の Dominion Online では港の村+羊の習性で +1 金を得られる.

ドミニオン Wiki の港の村のページにもある通り,2025 年 3 月にドナルド氏は港の村+羊の習性で追加の 1 金を得ないと発言しているので,その後にルール変更があったか,Online での実装が誤っていることになる.
現行のルールとしてどちらが正しいのか私もあまり良く分かっていないので,この辺りのことをご存知の方がいたら教えて頂けるとありがたい. なおカメレオンの習性でも試してみたが,こちらはルールと整合的に実装されていた.
別の話として,港の村 A の直後に港の村 B を使用した場合,港の村 A が 1 金を生むことは基本的には無いのだが,港の村 B の効果の処理終了時 (あるいはそれ以前) に港の村 B が 1 金を生み出すことにより,港の村 A も 1 金を生み出せる場合が存在する.その具体例としては港の村の詳細なルール内の「鼓舞するとの組み合わせ例」などがある.
セイレーン
書いてあること自体は難しくはないのだが…悪用するなら移動阻止ルールに真面目に向き合わなくてはならなくなる. アクションカードの廃棄を避けつつセイレーンをデッキに入れる方法についての記事はいろいろあるので参考にされたい.
- セイレーンを「手札のアクション1枚廃棄」を行わずにデッキに入れられる処理についてのまとめ (ドミニオン Wiki)
- 【ドミニオン】セイレーンを廃棄しないパターン【略奪】 (チャーシュー氏 note)
- セイレーンを廃棄しないための裏技ルール談義 (後ずさりしながらドミニオン)
判定法
セイレーンは獲得場所から移動させると良いということだけなんとなく覚えていると,召喚や封鎖 (これらは獲得場所から移動していない),身代わり (捨て札からデッキトップに移動するが,それが獲得と同時でないため遅い) などで勘違いをする原因にもなる.
個人的に分かりやすいと思う判定法は「セイレーンを獲得する効果と,セイレーンを移動させる効果の由来が異なるかどうか」を考えるというものである.
判定法の利用例
- 召喚でセイレーンを脇に獲得した.
- セイレーンを獲得したのも,脇に置くのも同じ召喚による効果であるので,失敗する.
- セイレーンを購入により獲得し,望楼でデッキトップに置いた.
- セイレーンの獲得は購入によるものでしたのも,脇に置くのも同じ召喚による効果であるので,失敗する.
この判定法で注意すべきなのは「身代わりでデッキトップに獲得したセイレーンを牧羊犬で引き込もうとする」が失敗することである.これは獲得したセイレーンを身代わりの効果でデッキトップに置くまでにセイレーンの獲得時効果を処理しなければいけないことによる.
交替
まず基礎的な話をすると,(自分のターンで有れば) 負債を持っているかの判定の直前に負債を返済しても良い.
廃棄効果の方で,コストが高いカードを獲得後にそのコストが変動した場合が問題である.廃棄したカードのコストより低くなった場合,差の絶対値の負債を受け取ることになる.(参考: ドミニオンの日々) 確かにテキスト通りに処理するとそうなる気もするが,それにしても違和感がすごい.
またコインコスト以外は無視するので,屋敷を廃棄して錬金術師や大金が取れる.これは分かりにくいルールというよりはうっかりしがちな点だと思うが.
おわりに
軽い気持ちで思いついた記事テーマだったが,ちゃんと書こうとすると実戦で役に立つかも怪しいほど細かい話になり,大変だった.玉座や港の村周辺は今回調べて分かったことも多く勉強になった.あまりのややこしさから,今後玉座の間で持続が使用できなくなるかもしれないとも思ったが,基本セットにある玉座の間に「持続でない」などと書くのも変なので,今後も定期的にこういった処理の違いに頭を悩ませることになりそうだ.
明日 12/19 のアドベントカレンダーはさわらさんの記事になる予定です.お楽しみに.